「何でしょうか?」
「夜分遅くにすみません。僕は警視庁捜査第一課の鍬下と申します」
彼が警察手帳を見せると、女性は眉根を寄せた。
「警視庁? 私、何か悪いことしましたか?」
「いえ、そうじゃなくて、徳永皆実さんにお伺いしたいことがありまして」
「妹に? 妹が何か悪いことしたんですか?」
「いえ、そうじゃなくてですね。ところであなたは皆実さんのお姉さんですか?」
「はい。徳永悦子といいます。妹はここにはいませんよ。ここは実家で両親も亡くなって、私は独身なのでここで独り暮らししてるんです」
「そうですか。さっきお電話したら福原さんとおっしゃっていましたが、ご結婚されたんですね。実は国際超能力研究所のことを調べていまして、その当時のことを聞きたくてご連絡したんですが、電話を切られてしまったので、それでこちらを直接伺った次第です」
悦子の顔が途端に曇った。
「そのことなら妹は何も話さないと思います。妹はその当時高卒で非行に走っていたので、就職先がなくて困って、それであんな怪しげなところに就職してしまったんです。
でも中でどんな仕事をしているのか外部には絶対秘密にするようきつく言われていたようで、家族にさえ打ち明けることはありませんでした。
それがいきなりあの那花吉郎がTVに出てから大騒ぎになって、あの子も一度逮捕されて警察から厳しい取り調べを受けました。
結局不起訴処分となったんですが、それからもずっと世間から非難されて、この町の人たちからも白い目で見られていました。両親はそれを苦にして心中自殺したんです。二人とも教育者でしたから。それからはあの子も私も地獄でした。
皆実は精神を病んで病院に長く入院していたこともありました。でも、何故かその後、ネット上であの事件が検索できなくなってから世間も町の人たちも事件のことを忘れてしまったみたいです。
精神状態も少しずつ落ち着いてきて、今では結婚して幼稚園の先生をして幸せに暮らしています。だから昔の事件のことを蒸し返して嫌なことを思い出させたくないんです」
「そうですか……」
悦子の真剣な表情に鍬下は半ば諦めかけていた。
「いえ、話すわ」
背後から聞こえた声に驚き振り返るとそこには目が細く丸顔で少しふくよかな女性がビニール袋を持って立っていた。
「あなたが皆実さん?」
次回更新は5月21日(木)、21時の予定です。
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