【前回記事を読む】「いじわる…しないで下さい」…背中のフックを外され、左右とも指でなぞられた。口に含まれ舌で転がされると声が出てしまい…
瞳にプロポーズ~年の差婚
――五月になり――、英介は今回の報告を兼ねて命日に両親が眠るお墓へ足を運んだ。
買ってきた花とバケツに汲んできた水を持ち歩いていると段々お線香の匂いがしてきた。
誰か他の方もこの時間にお墓参りに来ているのかと珍しそうに思っていると英介の両親のお墓に手を合わせているご老人が立っていた。そろりそろり近づいてよく見ると昔お世話になった小学校時代の担任で後に校長先生となった早川郁三(はやかわいくぞう)だった。
早川……最近なんだろうこんなに同じ苗字が続くものなのかなぁと英介は一瞬思った。
ちょうど、英介とすれ違う男性がいた。……トムだった。へへへとニヤニヤしていた。
そして手を合わせていた早川先生は気配が分かったのかあちらから話をしてきた。
「来たのか英介、本当に久しぶりだなぁ。元気にしていたか」
片目を開け横目でこちらを見た。
英介は何だか昔にタイムスリップしたかのように早川先生を前に背筋を伸ばし立った。
「先生おはようございます。それと本当お久しぶりです。うちの親の墓参りなんてどうしたんですか。えっ、もしかして……たまに墓参りに来た時にえらく綺麗になってるなぁと思っていたんですが先生だったんですか」
早川先生はニヤリと英介を見た。
「えっ、でも、何で先生が定期的に墓参りしてくださっているのですか」
早川先生はカバンの中からあるお守りを取り出した。
「えっ、これは何ですか」
英介は不思議そうに早川の顔を見た。
「お前のお父さんから頂いたものだよ」
「えっ、父ですか」
「そうだ」
「何故これを僕に」
早川は墓石を見て言った。
「当時、私が英介の担任をしていた時に教頭就任の話を学校の方から頂いていた。すごく嬉しかったが、何人かの先輩教師たちはねたみやひがみから私を憎んでいた。
しかし、実力が無くても年功序列や人に気に入られているという理由だけで人の上に立つ教職の環境だけは何としてでも変えていきたいという当時の校長の考えに私は賛同していた。そして悩んだ。
そんな時、PTA会議に参加していた英介、お前のお父さんが私を救ってくれた。会議が終わった後一人机に座り夕日を見ていた私に声を掛けてくれた。PTA役員の皆さんも事情を知っていたみたいで、その中でも役員をしていたお前のお父さんが言ったんだ。
『PTAの皆さんは賛成ですよ。応援しています。勇気を持って進めてください』とな。そして、お父さんはこう続けた。『ひ弱だった私をここまで成長させてくれたこのお守りをこれからは子供に勇気を与えてくれる立場としてこれをあなたに託します』と私に渡してくれた。
その後不思議なことに何だか勇気が湧き、やる気に満ち溢れ四十代で教頭に就任することができた。就任後に挨拶に伺おうと思ったが、あの最悪な事故が発生した。相手のよそ見とハンドルミスで車と車が正面衝突……。
非常に責任を感じた。英介にも申し訳なかった……だが、お前のお父さんとの約束を守り教職の場を変えなくてはならないと思い。その後、校長そして教育委員会に進み、教育長になった」
「先生それは違います。先生の責任ではありません。そんなことは言わないでください」
英介は早川の両手を握り言った。