「お墓参りに来ている間にいつか英介に会える時が来ると思い定年前から今日まで幾度か通い続けた。しかし通い続けて良かった。これで私の役目は終わりだ」
早川はホッとした顔つきに変わり英介に微笑んだ。
頑張れよと英介の肩をトントンと軽く叩き早川はその場を離れようとした。
「先生、待ってください」
早川は振り返った。
英介はカバンからメモ帳を取り出し電話番号を書き早川に手渡した。
「先生、これ私の電話番号です。今度、晩ご飯、もしくは昼飯でもどうですか。最近、良い店を知人から教えてもらったので今度連絡します」
「あの英介がごちそうしてくれるのか。楽しみにしているよ」
早川は笑顔で片手を上げて去っていった。
早川が去った後、英介は両親のお墓の前で手を合わせお願いをした。
「父さん、母さん、俺、今日、彼女にプロポーズするよ。頑張るよ。もしも成功したら彼女をここへ連れて来て紹介するよ。応援よろしくお願いします」
英介は今まで何人もの女性と付き合ってきたが今までとは心の想いが違うだけに気が引き締まる思いであった。
その日の午後三時、東京スカイツリーの近くで瞳と待ち合わせをした。
しかし、時間になったが瞳は英介の前に現れなかった。瞳ちゃんのような女性に限ってそんなことはないだろうと思いつつ、もしかしてドタキャンと思った瞬間スマホが鳴った。
「英君、なかなか連絡できなくてごめんね。実はもう到着しててすぐ近くにある【桜】というもんじゃ焼きのお店の前で並んでるの。前から英君とここで食べたいと思ってたんだ。ということで待ってるから来てね。じゃあ」
瞳はご機嫌でスマホを切った。
英介はホッとした思いで瞳のいるお店へ走った。
ゼーゼーしながら瞳の元へ到着した。
英介は瞳の顔を見た瞬間安堵し自然と笑みがこぼれた。
「英君どうかした? ……というか急にこんなことになってごめんね」
瞳はこのお店のもんじゃ焼きを英介と食べられることが嬉しい半面申し訳なさそうな顔をしていた。
「いや、何もないよ」
英介は自分が瞳のことを少しでも疑ってしまったことへの反省とこんなに女性のことを真剣に想っている自分のことに驚かされた。
待たされること二十分、ようやく二人は入店することができた。
二人は牛肉入りのミックスもんじゃとお餅入りのもんじゃを注文した。
生ビールで乾杯後二人はホッとした。
「あー久しぶりだなー。高校生の時もたまに友達や当時の彼氏とここに来て食べてたの。社会人になってからはほとんど来なくなってしまってたんだ。だから何だか久しぶりで嬉しい」
瞳は目をキラキラさせていた。
「それじゃ高校生の時の瞳ちゃんとも食べに行きたかったよ」
「犯罪だよ!」
瞳の目が濁った。
「何言ってんだよこのおっさんは!」
トムはカウンターでもんじゃ焼きを食べながら目が炎で一杯になるほど怒っていた。
「冗談です……冗談だよ……失礼しました」
英介は冷や汗をかいていた。
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