「はい、そうなります。キミたちは〝小川女子〟ですよね。僕は、一昨年(おととし)まで〝小川東〟に通っていたんです」

「えっ、あっ、そうなんですか……」

またまた私たちは顔を見合わせた。小川東高校は、私たちの女子高の姉妹校であるところの男子校だ。急に親近感を覚えた。ということは、一昨年まで吉田さんはこの駅を使って通学をしていたということか。だとしたらどこかで会っていたかもしれない。でも、見覚えはない。

「じゃあ、吉田さんは、一昨年まで制服を着てこの駅で乗り降りしていたのですね」

「いや、僕の家はこの街にあるから、高校へは自転車で通っていました。いまは電車通学で大学に通っていますから、この駅を利用していますけどね」

そうか、そういうことか。ちょっと考えればわかることだ。だとしたら、駅で会うことなどまずないわけだから、見覚えなどあろうはずがない。だいぶ舞い上がっているのかもしれない。

「大学生活は楽しいですか……?」

恵美ちゃんも負けじと質問をしてきた。ちょっとだけ吉田さんの表情に笑みがこぼれた。「そうですねぇ、まだ基礎科目メインで、それほど勉強はたいへんじゃないからけっこう楽しいですよ」

ええーっ、そうなのかぁ、医学部って楽しそうだなぁ。いいなぁ、いいなぁ。

私は心のなかでワクワクした気持ちになった。

クラブはなんですか、趣味はどういうものですか、小川市のどこにお住まいですか、なんで医学部に行ったのですか……、いろいろと尋ねたいことが急に出てきたけれど、初対面で会って間もない、ただの定期券の拾い主にそんなことを聞けるはずもない。

 

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