【前回記事を読む】朝起きて顔を洗ったところで違和感。鏡を見ると、口の左側が垂れ下がっていた…医者に告げられたのは、「女の子だから…」
第二章 看護師へのルーツ
もう一回は腕の骨折だった。
これは高校二年のときで、陸上のロード練習をしている最中だった。脚がもつれて激しく転んだ。咄嗟のことでうまく受け身が取れなかった。
右手をつかなければ顔面を強打していただろうからやむを得なかった。鈍い音がして激しい痛みが走った次の瞬間、右手がダランとしてしまった。
このときも前に入院した病院に連れて行かれて、結果は、不運にも右手首の骨折だった。
手術をしたほうが早く治るということで、私は、はじめて外科的処置を受けることになった。今度は整形外科病棟だった。
命を取られるほどではないと頭でわかっていても、怖かった。だから、このときも看護師さんたちにあれこれ質問してしまった。
「手術は痛いですか」、「どのくらい時間がかかりますか」、「麻酔はつらいですか」などなど。
「大丈夫よ、寝ている間にパッと終わっちゃうから」、「たいして痛くはないわよ。もしそうなったとしても痛み止めをあげるからぜんぜん平気よ」、「こんな手首の骨折なんかで死ぬなんてことは絶対ないわ」このときも看護師さんにはずいぶん助けられた。
手術が終わればなまじ身体は元気だったので、けっこう暇だった。思ったよりも痛みは少なく、三角巾で腕を吊(つ)ってジッとしているほうがかえってしんどかった。
結局、手術から退院までは三週間くらいかかった。でも、そのぶん看護師さんたちといろいろ話ができた。
二〇歳そこそこくらいの明るい看護師さんがいたので、「どうしてナースになろうと思ったのですか?」と尋ねてみたら、「そんなの決まっているじゃない、モテるからよ。コンパなんかに行けば男性陣から質問攻めよ」なんてことを教えられた。
私も当時は高校生、少しだけ異性に興味が出てくる年ごろだった。
そのときは、「へえーそうなのかなぁ、でもそれはお姉さんがカワイイからじゃないのかな」と思ったけれど、ナースになったいま感じることは、確かに世間体は悪くない。
親戚からはチヤホヤされることも多いし、身体の悩みを相談されることも増えた。
しかし、当たり前だけれど、好きな人がいたとしても、その相手から愛されるかどうかは、きっとまた別な問題だ。
今回の入院も楽しかった。あまりに楽しかったので、なんか最後は退院したくないような気にさえなった。
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