瞳に一目ぼれ 

春先の桜吹雪が舞う四月、新社会人・新入学生が慣れないスーツや制服に袖を通し目を輝かせている。新たなステージにそれぞれの望みを抱き一歩一歩前を進んでいく。その様子を桜の木の枝先に座った二人の天使が足をぶらぶらさせながら楽しそうに眺めていた。

「さー次の標的は誰にしようかなぁ?」

いたずら天使のトムは次なる恋に縁がなさそうな人間を口笛を吹きながら探していた。

そのトムに視線を送っている者がいた。

「トム! もういい加減にしないとゼウス様に言って雷ビリビリのお仕置きをしてもらうわよ!」

隣に座っている純愛天使のジュウェルだった。何とかしてトムを阻止しようとしていた。

ジュウェルがトムのことを止めさせようとしているのは去年大失敗した恋愛プロジェクトにあった。

それは、あるダメダメ男に目を付けたトムが真実の愛を知ってもらおうと愛の矢ときっかけの矢を放ち、後にダメダメ男をみるみるうちに見違えるほどの美男子にさせたことだった。 

 

見事その男は以前から片思いしていた女性とお付き合いをすることに成功。めでたしめでたしと思いきや……男に愛の矢を放つ時、何を考えていたのかトムは愛の念と一緒にいやらしい気持ちを入れ過ぎたせいで男はプレイボーイに大変身。

一週間も経たないうちにその女性に飽きてしまい別れることに、そしてすぐ他の女性と付き合うことになった。彼女は大泣きし立ち直れなくなるほど寝込んでしまった。 

その後をフォローするようにジュウェルは彼女に愛の矢を放った。そのおかげか後に相性の良い男性と結ばれハッピーエンドとなった。……しかしジュウェルはそれだけでは気が済まなかったのである。

怒り憤怒で元ダメダメ男にビンタの矢と恥ずかしの矢を放ったのであった。

男は彼女とお寿司屋さんで食事中だった。しかし話が合わなくなり彼女と喧嘩し、そしてビンタされるはめに……その勢いで付けていた部分かつらが飛んでいってしまい近くに座っていた筋肉マッチョのお兄さんのお吸い物にポチョンと入ってしまった。

そのお吸い物にはとろろ昆布が入っておりタイミング悪くかつらが程よく入り混じり、それを瞬時に口に入れてしまった。筋肉マッチョのお兄さんは当然ながら喉にかつらが引っ掛かり苦しくなるほど咳こむことになった。一緒に食事をしていた彼女が【大きなかぶ】の話のようにかつらを引っ張りようやく口から取れた。

それを見ていた元ダメダメ男の彼女は焦り急ぎ店を出ていってしまった。残された元ダメダメ男は筋肉マッチョのお兄さんとその彼女に睨まれて放心状態で動けなくなっていた。

そこへ二人のダブルパンチをお見舞いされ鼻血ブーの状態になり我に帰ることができた。その後、男は一から人生を出直す考えで仏門に入った。もちろんジュウェルは激怒し原因をつくったトムに注意をするのだった。

そしてトムとジュウェルが話をしている際中に一人の男が二人の下を通過していった。

その男の名前は風間英介(かざまえいすけ)といい、独身で大手商社の菱井ホールディングスの部長だった。

誰もが認めるほどのイケメンだが、厄介なのが五〇前の四十九歳で女性よりも仕事優先という仕事人間。しかしここまでになってしまったのは昔の恋人との関係にあることがトム使用の愛タブレットでのリサーチで判明。そこでトムとジュウェルは英介を尾行することに。

英介は【中高年層独身の方対象。人生設計セミナー】というセミナー会場へと向かっていたのであった。

その後、英介はそのセミナー運営会社からスタッフとして派遣されていた早川瞳(はやかわひとみ)と運命的な出会いをすることとなる。

瞳は誰もが振り向くほど可愛く、明るく、優しい二十五歳の女性であった。トムとジュウェルは瞳を見て共にこの子と確信しあい協力することに。それは二人が英介にもう一度愛の良さを知ってもらおうとするためであった。