「それじゃあまだ答えは見つかってないのか」
「だなぁ。それを知るにゃせめて一世紀は生きてみねぇと」
「一世紀ってあと二十年も生きるつもりか」
「おうよ。それくらい時間がねえと、雄作に金返しきれねぇって」
「仮にお前が百歳まで生きたとしてもワシがそこまで持つとは思えんがな」
「なーに弱気なこと言ってんだ。人間、最後はど根性だ。どんなに辛い目に遭ったって歯ぁ食いしばって耐えるんだよ」
「ほれ」と言いながら長年の喫煙で黄ばんだ歯と痩せた歯茎を見せる良三。景浦はその口に鯉の餌でもぶち込んでやろうかと思った。しかしこの男の根性論はなかなか侮れない。それで妻や孫と慎ましやかだが幸せに暮らしているのだから。
「それによ、雄作。あと二十年も生きりゃあ立派な女医になった若菜が拝めるぞ」
「……その頃はもう三十四歳か」
「あぁ。さぞやイイ女になってるはずだぜ。なんてったって俺の孫なんだから」
戯言に過ぎないが、良三ならば本当に百歳、いや、百二十歳まで生きるかもしれない。不思議とそう思ってしまう魅力がこの男にはあった。
同日夜。良三は防寒着を着こんで出かける前に勉強中の若菜の部屋に顔を出した。
「うおっ、あったけぇな、この部屋。しぶとい野郎だなぁ、このストーブも」
「あ、おじいちゃん。どしたのぉ。そんなモコモコで」
「なんだ若菜。眠いんなら素直に寝ろよ」
若菜は目をこすりながら防寒対策バッチリの祖父を見るともなく眺めた。
「俺、ちょっくら散歩にでも行ってくるわ」
「え、今何時?」