第十三章 春の別れ

新しい年が明けて、3ヶ月ほど経った頃のことだった。母が体調を崩した。

最初は風邪だと思った。微熱があり、食欲がなく、ぐったりしている。でも、数日経っても回復しなかった。

「お母さん、病院に行こう」

「大丈夫よ……少し休めば……」

「だめ。3日も熱が下がらないのはおかしいよ」

私は母を連れて、かかりつけの病院に行った。検査の結果、肺炎と診断された。

「入院が必要です」

医師の言葉に、私は頭が真っ白になった。

「入院……」

「高齢者の肺炎は、重症化しやすいんです。早めの治療が大切ですから」

母は不安そうな顔で私を見た。

「入院するの……?」

「大丈夫だよ、お母さん。すぐ良くなるから」

私は母の手を握りながら、自分にも言い聞かせるように言った。

母は個室に入院した。

認知症があるため、大部屋では他の患者に迷惑をかける可能性があるという理由だった。個室は費用が高かったが、そんなことは気にならなかった。

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母が入院して3週間後の深夜、病院から「お母様の意識がなくなりました。すぐ来てください」飛び起きてタクシーで駆けつけると…

 

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