そう、誰かの部屋だった。

「誰の部屋?」

私は思わずつぶやいた。我が家は三人家族で、父母の部屋は一階にある。二階は私の寝室と勉強部屋とこの部屋があるのだが、ここは確か、母が趣味の市松人形の着物を作るときだけ使っていたはずだ。それが誰かの部屋に変わっていた。

東と南の窓に掛かっているカーテンはブルーで、ベッドカバーもブルーだった。ナラ材を使った丁寧な造りの机が真新しかった。本棚には一冊の本も入っていなかったが、しっかりとしたいい家具だった。大きな洋服ダンスやベッドも、とても感じのよい造りだった。

いずれも高価な物であることは、素人の私にも解った。これを見ただけで、揃えた母の想いが伝わってくるようだった。

私は部屋に入り、カーテンとガラス窓を開けた。新鮮な空気と日差しが、部屋の隅々まで入り込んできた。

明るい日差しの中に浮かび上がったそれらの家具は、使われた形跡がまったくなかったが、七年間か、それ以上放置されていたから、何となく薄汚れていた。

私はタンスを開けた。中に洋服の類は一枚もなかったが、シーツやタオルなどが、丁寧にたたまれて入っていた。それらはすべて寒色系の色合いをしていた。この部屋が男の子のために用意されたものだと想像できたが、私は独りっ子で兄弟はいない。どうして両親がこんな部屋を用意したのか、皆目理解できなかった。

「隠し子でもいたのかしら」

私はつぶやきながら振り返った。ネコニャがくすんだ灰褐色の机を指で触っていた。伏せた目から、すうっといとしさがこぼれ落ちているような感じがした。

「ネコニャ?」

私は彼に声を掛けた。

「ん?」

ネコニャははっとしたように私を見た。

次回更新は4月26日(日)、14時の予定です。

 

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