「やだー!」
私はとんでもないことを想像してしまった。東の部屋の床が透けていて、その下にある居間や、その横のピアノ室を、市松人形たちが見下ろしている図だった。一日中睨みつけられている気がして恐ろしくなった。
「開けるー! もし本当にいたら、処分しちゃう」
母が戻ってくるとは思っていなかったから、どこかのお寺にでも持っていって、手厚く供養して処分してもらおうと、私は一瞬のうちに計算していた。
私はネコニャの背中に張り付いて、その部屋に向かった。中央の階段を上って左側、つまり東に向かって二階を歩くのは、七年ぶりだった。
「上条さん、よくそんなに長い間、放っておいたねぇ。普通、怖くてできないことだよ」
ネコニャは呆れたように言った。
「だってあの部屋だけ、ないことにしておいたんだもの。とにかくこの家の必要最低限の
部屋だけ使って、生活していたんだもん」
私は彼のトレーナーを握りしめていた。
「じゃあ、開けるね」
ネコニャが私を振り返った。
「うん」
私は頷き、ネコニャの脇腹からドアノブを覗き込んだ。彼はゆっくりとドアを開けた。七年間閉め切っていた部屋から濁った空気が流れ出し、それが鼻腔を這い上がってきた。廊下の空気よりも生暖かく、酸素が少ないように感じられた。
「息苦しい空気だわ」
私のつぶやきと同時に、ネコニャが一気にドアを開けた。
「え?」
彼の背後から覗いて、私は思わず顎を突き出した。そこには一体の市松人形もなく、ありきたりな家具が置かれた部屋があった。