【前回の記事を読む】ある夜、左脇腹に激痛が走り、病棟のカウンターに足を引きずって辿り着いた。そこでは2人の看護師が、冗談を言い合っていて…
第2章 序文にかえて
―この本を書く動機と正当性
2011年以降、人道的医療安楽死は、医療倫理的に問題があるとされており、2015年以降では、刑法上でも制裁の対象(ドイツ刑法第217条)となり、不可能となったのである。この刑法は、わたしが考えている医療の良心と職業の自由とは正反対の内容であった。
わたしは、患者さんの利益のために、2016年7月にドイツ連邦憲法裁判所に(他の数名の医師と共に)ドイツ刑法第217条に対する訴えを起こした。最後の衝突は、2014年5月に行われたわたしに対する捜査であった。この衝突は、人道的医療安楽死支持者と人道的医療安楽死反対者の間に大きな溝があることを証明した。
さらに、人道的医療安楽死に反対する者が、その支持者を潰そうとしていることを明らかに示していた。この捜査は、わたし自身にも影響を与えており、この本を書く動機にもなっているので、その内容をごく簡単に紹介しておきたい。
2014年5月5日、フランクフルトの検事長は、わたしをフランクフルト検察庁に、殺人、嘱託殺人、医療援助の不提供、医薬品及び化学薬品法違反のかどで刑事告発した。
2014年5月27日、フランクフルト警察本部犯罪捜査本部から、ベルリンの国家保護局犯罪捜査本部に取調べの依頼が出された。その後、国家犯罪捜査局I部(人身に対する犯罪)、II部(殺人罪)の被告人として、同年7月10日に、わたしへの取調べが行われた。
罪状は「脅迫犯罪行為で公共の福祉を乱した」(ドイツ社会法第126条)というもので、報道犯罪の文脈での取り調べであった。
事情聴取では、まず、わたし自身に関する質問に答えなければならなかった。わたしは、この告発に関する本質的な質問(患者の病気に対する栄養剤の投与やその後の援助の方法など)には答えなかったので、明らかに尋問官を困らせた。わたしはこの問題を、弁護士に引き渡した。弁護士は、14ページにわたる陳述書を提出してくれた。
その結果フランクフルト検察庁は、2014年10月21日、根拠を明らかにすることができないとして、予備手続きを中止したのである(刑事訴訟法160条1項、合わせて152条2項)1。