V氏はどうやら他人から見下されることに過敏な人であった。
他人を低く扱おうとする言動もその本質と関係して根付いているらしく、何かと理由をつけては自分の優位性を強調しようとした。
差別意識を露骨に示すのは会社のルールで御法度になっていたが、仕事上の理由で自らX社の籍を失って派遣社員になっていた私に対し、彼は独自の情念と言い方で分際をわきまえさせるべく妙な熱意を発揮した。
威張れるときに威張らないのは損だと信じているかのようなV氏の振る舞いは興味深くもあったが、私がより問題にせざるを得なかったのは彼の能力であった。
P氏と比べれば専門性が多少は高いと判断できる面があるとはいえ、理解の幅が狭く、発想のスケールが小さく、使っている研究開発費に見合うだけの大きなビジネスを創出する力は備えていなかった。W社で生まれた萌芽(ほうが)を活かすのはY社の使命の一つであるはずだが、彼はその任にとても堪えない人だった。
個人としての能力が低くても他人を活用するための度量があれば役割は果たせるかもしれないが、V氏にはそれが決定的に欠けていた。専門や職務の縦割りにこだわり、融通が必要なところにも線を引いて自分の領域を守り、肝心な議論を難しくしてしまう傾向が彼には顕著にあった。
生まれたばかりのX社に迷わず入った私はビジネスの創出には縦割りではなく融合が必要だと信じていたが、全能感で邁進するP氏が自滅してその代役になった彼は、大きな組織の内部で個人的に壁を作り、仕事の成果ではなく地位とプライドの保全を第一に考えていた。
V氏は伝統的な組織の形骸化を象徴する存在であった。
彼のように大企業で昇進コースに乗っているジェネラリスト的な立場の人は高い見地で考える能力を求められているはずだが、実際の彼は人と業務を縦割りで扱い、仕事の目的や意義を自他が論じられないようにする役割を果たしていた。
分業の合理性を信じているからではなく、自身が目的を把握できていないために下にいる私たちにも限られた見地での働き方を求めてしまうらしく、その態度を省みる余裕も彼にはなかった。
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