【前回の記事を読む】「最後だから」。母はそう言って全力で楽しんできた…私は「また言ってる」と思っていたが……

第一章 心が動いた時

13 ありがとうの方向

人に何かをして頂き「ありがとう」と伝えることは日常の中にはよくあることかもしれません。

家族に対して、仕事関係の方に対して、恋人に対して……見ず知らずの方でも、エレベーターに乗っている時に行き先ボタンを押して頂いた時や、先に入り口を入りながら私が入るまでドアを押さえて頂いた時も、私はやはり「ありがとう」を伝えます。

「ありがとう」の言葉を至るところで使っている私ですが、ふと、この「ありがとう」が、「伝える」ばかりになっていないかと、そんな思いがよぎりました。

「ありがとう」を礼儀や挨拶のように使い、「伝える=感謝の気持ちを持っている」となってはいないかと。

お礼の気持ちを伝えたいが、わざわざ連絡をするのは迷惑なのではないか、気持ちを贈り物で表現したいけれどご負担になるのではないか、などと気持ちを自分に向けているような、そんな気がしたのです。

先日、高校時代の友人と会いました。

久しぶりに会ってお話しすることを楽しみに身ひとつで出かけた私でしたが、友人は私にサプライズでクリスマスのプレゼントを贈ってくれました。

仕事をしながら忙しい日々を送る友人が私のことを思い、プレゼントを用意してくれていたことを思うと、感謝の気持ちでいっぱいになりました。

会えることを楽しみにしていただけだった私は、何も用意をしていません。

友人の心配りに嬉しさが込み上げた私は、嬉しい気持ちと一緒に、ありがとうの気持ちが込み上げ、「私も友人を喜ばせたい」と思いました。

その後、私はどうすれば友人に喜んでもらえるかを懸命に考えました。

そして実行したことに、友人は大変喜んでくれたのです。

本心からのありがとうは、相手にも喜んでもらいたいという気持ちが起きるもの。

普段から使っている「ありがとうを伝える言葉」はどこか自分に向いている感じで、相手に向いている言葉ではないのかもしれないなぁと思ったのです。

「伝える」のではなく「伝わる」もの。

なかなかややこしいのですが、「ありがとう」を「伝わる」ものとして改めて感謝の気持ちを伝えていきたいなぁと、そんなふうに思ったのでした。