【前回の記事を読む】自分の意見や気持ちを人に伝えることのメリットとは?まずは少しずつ…安心して話せる人に伝えてみる

第一章 心が動いた時

8 「頑張れ」に感謝できた日

いつも通りにと思いながらも明らかにいつもよりペースが速くなっていたのを覚えています。ロープの外から出場しているランナーを応援している人たちの声すら聞こえないほどに私は緊張していました。

一人で広い空間を好きに走るのとはまるで違う、その息苦しい空気を必死に吸い込みながら走り続けていましたが、6kmくらい走ったところで私の精神と体力は限界に近づいていました。

もう歩こう。いや、もう少し。そんなことを繰り返し思いながら走っているつもりでしたが、おそらく普段の早歩き程度の速度になっていたと思います。

たくさんのランナーに抜かれ、制限時間内に走れるのかという不安を抱えながら走っていた時、遠くから、「美穂ちゃーん、頑張れー!」と声が聴こえました。

声をかけてくれたのは子どもが赤ちゃんだった頃からおつき合いのある友人夫婦でした。留守番していた子どもからマラソン大会に出ていると聞いて、駆けつけてきてくれたのです。

その二人の笑顔も未だに忘れられないのですが、あの時「頑張れー!」とかけてくれた明るい声は今も私の血肉となっています。

どんなに足が回らなくても最後まで走り続けられたのは、あの「頑張れ」があったからです。私がゴールした頃にはほとんどのランナーが完走していましたが、それでも私は最高の気分でした。

家族が「頑張ってね」と言ってくれます。友人が「頑張って」と言ってくれます。仲間も「頑張ろう」と言ってくれます。今の私は、そう伝えてくれる人に、感謝の気持ちしかありません。しかし、自分が使う時には躊躇することもあります。相手にとって「頑張って」が重くないか?と、慎重になる。

でも、いざ言葉にする時には心から思いを込めて伝えます。「行ってらっしゃい! 頑張ってね!!」と。