彼女の左胸には、小さな手書きのネームプレートが付いている……〈見習い〉。
リョウコさんは店の手伝いを快諾すると共に、ネイビーに相談を持ちかけた。
――お店、手伝うわ。実は一度やってみたかったの。ところでネイビー。わたし、ここの大テーブルの空間が、ずっと気になっていて。週に2日ぐらい、昼間の時間を貸してもらえないかしら。
彼女は大テーブルで、ちくちくの会(和洋裁の得意なひとが、サークルのような場をひらき、服や布製の玩具、タペストリーなどをつくる)をはじめた。
すごく裁縫の達者なおばあちゃんがいるの。このひとの技やセンスは、地域のみんなで引き継ぐべきだと思っていて。みんなのそばにも、近所の無形文化財みたいなひとがいるでしょ。ほかにも、おみこしの保存管理とか、地元のお宝探検家とか。そういうのって、会議室みたいなところじゃあ、勉強会みたいで、もうひとつ、味がでないのよ。
シュウトくんとアッちゃんは、たびたび棟梁のいる北陸へ出向くようになった。たまにYOさんもつき合ってくれる。先週、若いテクノロジストは木の見立てを、ベテランの工務店主はノコギリの刃の目立てを、それぞれ熱心に質問した。
僕、こんな世界があるなんて、まるで知らなかった。人間の手は、もうひとつの頭脳じゃないか。
若い衆さんたちは、木を丹念に触って、手が考えているみたいだ。
アッちゃんさん、サイバーフィジカル*1の未来は、こういう場所にヒントが眠っているのかも。
しばらくこっちに合宿させてもらってもいいかな。考えてみれば、僕の仕事は、ネットにつながりさえすれば、場所を選ばない。
YOさんは道具の扱いだけでなく、こまごま、さまざま、感動していた。
おいおい、こっちの焼き魚定食680円は、サバじゃなくて太刀魚だぜ。レベル、めちゃ高いぞ。