【前回記事を読む】大陸の端っこ、古代の日本にあった豊かな資源…それは金、銀、銅、鉄だけにはとどまらず…

第五章 我々は、なにを学び、どこへ行くのか

ネイビーは、旅をはじめる準備に入った。〈Patina〉に集うみんなとも、じっくり話した。

「おれは、店を辞めるんじゃないんだ。ここは、母港みたいなもんだからね。いずれ帰港する」

「ぜんぜん、来なくなるわけじゃないだろ?」YOさんが、すこし怒ったように訊く。

「ボクのおしゃべり、誰が受け止めてくれるんだろう?」ジョージが小さな声で言う。

クマくんは声も立てず、昭和のスポ根漫画のように、幅の広いサラサラの涙を流した。

タエさんのひとことが、効いた。

「……みんながいてくれれば、そんなに変わらないんじゃないかしら」

年が明けて、紺色のシャツを羽織った男は、働き学ぶひとびとの内にひそむ、ヒューマニティを探しに出かけた。

第六章 ひとりひとりの、小さな旅立ち

ネイビーが旅に出てから、半年と少しが過ぎた。駅舎の改札を抜けると、今年も小ぶりな七夕飾りが迎えてくれる。ハナミズキの街路を歩けば、〈Patina〉の濃紺の扉が、以前と変わらず右手に見えてくる。顔を近づけると、ドアプレートだけが新しくなっていた。

営業日は、月・火・木・金の週4日。開店時間は、19時からに変更されている。

ある週末、扉を開けて入ると、カウンターの中には、アッちゃんがちょこんと立っている。

月・火曜日はリョウコさん、木・金曜日はアッちゃんが、店を手伝うことになったのだ。

ネイビーはアッちゃんに相談するとき、こう言った。ここのカウンター仕事は、放課後の部室の、母性あるマネージャーみたいなもんだ。

――あたしは、いいお母さんになりたいんだけど。まずは、ここの仲間のママになってみた。なにより〈Patina〉は、私が自分を考え直すためのマザープレイスだ。