見かねたA子(派遣)が由記子に近づき、耳元で言った。

「ただ笑って受け答えすれば良いのよ」。

由記子には選ぶ余裕などなく、A子の言葉に従った。

しばらくすると由記子への、苛めがなくなったのではないか!

自分の努力が実ったと喜ぶ由記子に、A子の優しげに微笑む気配を感じた時、自分が何をした訳でもなく、苛めが終わったのはA子の存在だと知らされるのだ。

「良かったね」と目で合図をしたA子も、由記子と同じ地方出だと知った。

A子は今の職場が長いらしいが、この派遣という仕事を一つの場所で、長く勤めるのは難しいと思われた。何もなかったような顔を見せるが、A子には口に出せない事や、色々あったに違いないのだ。

聞いた限りでは職場の上司との付き合いなどは、当たり前という事らしいのだ。

見栄えもしないA子の表情に、過去の出来事など何一つ見えはしなかった。

A子と行った居酒屋での事。店の男性客を品定めでもするように身を乗り出し、眺めたのだ。

A子と由記子の席に男が近寄り、声を掛けて来ただけで、目の色が変わるA子が、他の職場の仲間が一緒だと、いつもの職場の顔に戻るのだ。

面白さを感じ遠くから眺める由記子に、ある日A子のアパートに、遊びに来るようにと言われた時、咄嗟に由記子は思う事と違う反応になった。

A子の誘いを断るなんてできないのだと……。

 

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