【前回の記事を読む】婚約者のソジュンは急遽韓国に一時帰国した。彼からの連絡を待ち続けるユナに1本の電話。彼の第一声は「金が足りない。だから…」
花ことばを聞かせて
指定されたホテルの部屋の、チャイムを押しても声がなく、そして居るはずのソジュンの姿はなかった。
部屋にある小さなデスクの上に白い封筒を見つけ、その中に手紙とお金が入っていた。メモを読むユナの顔が驚きの表情に変わっていった。
メモに書いてあったのは会社が倒産した経緯と、ソジュンがソウルに居られない理由があった。
最後に「探さないでくれ」と走り書きのように、乱れた字を目にしたとき、ようやくユナは起きていた事の真相を知ったのだった。
突然投げ出された悲しみに躰が震え、ユナは崩れ落ちるように床に手を付いた。
怒りの感情が溢れユナは「何故、どうして」、とソジュンを責めるが、ユナの声は涙で嗚咽になっていった。
一時でもソジュンが部屋に居た、という思いが、もしかしたらソジュンが戻ってくるかもしれないと、微かな思いに囚われるユナは、ソジュンを待たなければと、ホテルの部屋を離れられなかったのか……。
一夜明けホテルを出たユナは、まるで気が抜けたように当てもなく、ソウルの街を歩いていた。韓国はユナが生まれた故郷なのに、思い出すのはソジュンの事だけだった。
ソウルの街を二人で歩くはずが、一人で歩いているユナに、いつしか目の前の景色が霞んでゆく、そして幾つもの涙がユナの頬を伝い流れ落ちた。
午後便で日本に帰るユナは、どうする事もできない思いと、離れ難い辛さを胸に傷心のまま、空港へと向かい東京へと帰るしかない、それがユナの結末だった。
そんなユナを待っていたのは、金融機関の催促状を手にした、父親の悲しい目だった。
借りたお金の大きさを今更ながら、知る事となったユナは現実を知るが、白い封筒には僅かなお金しかなかった。
父親に頼るしかないユナは、これで何もかも終わったと別れを知る涙に、悲しみに終わりはないとでも言うのか、またしてもユナの前に悲劇が、音もなく近寄り出番を伺っていたのだから……。