──同時刻。

「ただいま」

「おーお帰り」

自宅に戻ってきた弟の康久に、兄の和弘が応える。

「兄ちゃん、何見てるの?」

康久がテレビに視線を向けた。

「ああ、ついに俺の聖地がなくなるんだよ」

「聖地? 何それ?」

「オマエさぁ、吊り橋効果って知ってる?」

「いや、何それ?」

康久が眉を曲げた。

「吊り橋の上とか怖い場所にいると、心臓がドキドキするだろ?」

「あ、うん」

「そうすると女の子は、恐怖のドキドキを恋愛感情のドキドキと錯覚して、一緒にいる男を好きになるっていうのが、吊り橋効果って言うんだけどな」

「へぇ、で? それが何?」

康久は更に眉を曲げる。

「狙ってる女の子をさぁ、あそこのホテルオオツに肝試しに連れて行くとさぁ、確実にオトせるんだ」

「へぇー。っていうか、あのホテル解体されちゃうんだ?」

「ああ、バカなユーチューバーが事故死したせいで、ついに行政が解体することに決めちゃったのさ」

「確か、エレベーターの開口に、足を踏み外して墜ちたんだっけ?」

「ああ、幽霊の動画を撮りに行って、自分が幽霊になってりゃ、世話ねぇよ」和弘が首をすくめる。

「そういうの、ミイラ取りがミイラになるって言うんだよね?」

「ああ、まさに自業自得。因果応報ってヤツだよな」

テレビでは丁度、廃ホテルが爆破解体される様子が映し出されていた……。

試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。

 

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