【前回の記事を読む】「その体をちょうだいよ」亡くなった友達の母親がクマのぬいぐるみを捻りあげると、針で全身を刺されたような痛みが走り…
夭逝の願い 藤原 基子
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それから、一華は金縛りに悩む事はなくなった。由利香は、二ヶ月を過ぎた頃には、あの日の記憶が綺麗に抜け落ちていた。
そして、瑞江は。
「瑞江さん、今日は気分が良さそうだったね」
「そうね。ナースステーションの所までお見送りしてくれたしね」
総合病院を出て、一華と由利香は表通りへと向かう。
身体中に腫瘍が見つかり、余命宣告を受けた瑞江は「これは当然の報いだ」と笑った。一華と由利香は、時間の許す限り瑞江の見舞いに訪れる。
一華は思う。瑞江は離れたくなくて麻衣の生き返りを願ったが、麻衣はもとより、瑞江のそばにずっといるつもりだったのではないか。
笑顔で手を振る瑞江の首に、真っ青の顔でしがみつく麻衣を見ると、そう思わずにはいられなかった。