聖地消滅 葛西 竜哉
「なぁ、次どこに行く?」
義之が言う『次』というのは、一般的に心霊スポットと呼ばれている廃墟のことだ。義之は、晃司と二人で、心霊スポットで動画を撮影する、いわゆる心霊系ユーチューバーである。
「それなんだけど、次は大津湖畔のホテルオオツにしよう」
「えっ、マジで?」
リーダーの晃司の発言に、義之は素っ頓狂な声をあげた。なぜなら、旧ホテルオオツというのは、週末に行けば必ず誰かが肝試しに訪れているほど、余りにもメジャー過ぎていて、今更動画をあげたところで、目新しさなど何もないからだ。
「ああ、もちろんマジだ」
「いや、確かに出るよ。あそこは出るし、カメラに映る可能性も高いけど、最近全然再生回数も伸びてないし、やっぱ誰も知らないスポットとか、もしくは地図に載らない呪われた村とかさぁ」
すぐに義之は反論をした。
「いや、次回はちょっと趣向を変えようかと思って」
「趣向を変える?」
「ああそうだ。次回にやろうとしてるのは、廃墟の探索じゃなくて、ドッキリ企画だよ」
「ドッキリ企画?」
義之は眉を曲げる。
「ああ、肝試しに来るバカなやつらを、幽霊に変装して驚かせようって企画」
「へぇ、それは確かに面白そうだな」
「だろ?」
「でもさぁ、バレて殴られたりとかするのは嫌だぞ」
「ああ、それは俺も嫌だ。だけどな……」晃司は言葉を切って、義之を見つめた。
「何だよ?」「お前さぁ、いつも心霊スポットに行ってるけど、もしそこで包丁を持った幽霊が、突然追いかけてきたらどうする?」
「えっ、そんなの逃げるに決まってんじゃん」
「だろ? 普通そうだって、突然幽霊に追いかけられて、逃げずに正体を突き止めてやろうなんて、そんな強者いるわけねぇよ」
「まぁ確かに」
義之は納得して頷いた。
「そうなると、事前に隠れて誰かが来るのを待たなきゃいけないだろ?」
「ああ、うん」
「だから頻繁に人が来るところじゃないと、誰も来ないのにずっと隠れてたって、動画なんて撮れないじゃん」
「ああ、だからホテルオオツか」
「そういうこと」
晃司はニヤリと口角をあげた。