【前回の記事を読む】近隣で少女が殺害された。犯人はまだ捕まっていない。が、弁護士を目指す俺はどうしても、逮捕後のプロセスを考える…
紅に凍える街
少し歩き「ただ……」せつまが考え込むように口を開いた。
「どうしたんだよ?」
せつまの顔を覗き込むように大津が尋ねた。
「犯罪はもちろんやっちゃいけないですよ、やっちゃダメなんですけど、その犯罪に至った経緯というか、犯罪を犯してしまった人にも、そこに行きついてしまったストーリーがあると思うんですよね」
「そりゃぁ、あるとは思うけど、結果的にはダメだろ」
「そりゃダメですよ」武部の言葉にかぶせるようにせつまが言った。
「なんていうか……新聞やニュースは『誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように行ったか』っていうふうに簡潔に伝えて、なになに容疑者が捕まったって言って、仮に犯人じゃなくても、普通の人はもうその人が犯人だって大概思うと思うんですよね」
「まぁな」
「それがなんつうか、こう……」
「何が言いたいんだよ」
比較的気の短い大津はイライラしているようだった。
「……やっぱいいです、なんでもないっす」
「なんだよ、まったく」大津が独り言のように言いながら詰所のドアを引く。
中からふわりと暖かい空気が漏れ、ほんのり石油の匂いが漂ってきた。
三人はそのまま、それぞれのいつもの場所に腰を下ろし、缶コーヒーを手にして、ほんの束の間の温もりに安堵の息をついた。