冬の冷たい風が肌を切り裂くように吹き抜ける中、せつまはバイクを走らせていた。
後悔と絶望が心を支配し、胸の奥に重い鉛のような感覚が広がる。指先はかじかみ、それでもアクセルを握る手には無意識に力がこもる。
目の前に広がる道は閑散としていた。片側一車線の道路には、路肩に車が無造作に並び、視界を阻む。どこか遠くで微かな笑い声が聞こえた気がした。
その瞬間、車の隙間から小さな影が弾けるように飛び出してきた。
「っ!」
ブレーキを強く握ると同時にタイヤが悲鳴を上げ、バイクは制御を失う。
体が大きく傾き、重力が牙をむく。ガードレールが目前に迫る。避けられない。
ガシャァァンッ!!
激しい衝撃が全身を駆け巡り、せつまの体は宙へと投げ出された。
時間がゆっくりと流れる。視界の端に青空が映る。冷たく澄んだ冬の空。
次の瞬間、鈍い音と共に背中が縁石に叩きつけられる。
息ができない。視界が滲む。痛みはもう感じない。ただ鼓動だけが耳の奥で遠く響く。瞼が重くなる。
意識が薄れていく中、せつまは大津の名前を呟いた。大津さんに、俺はまだ謝れていない。
それと同時に、かつて温もりをくれた人々の笑顔が浮かび、やがて静かに世界が重なっていった。