「そん時はヤバいですよね。証拠がなかったら不起訴で釈放されることもあるけど、下手したら冤罪ですよ」

「そりゃまぁ、前にチラッと言ってたしな。どんな感じなんだよ、裁判って」

武部も興味があるのか、ポケットに手を突っ込みながら歩調を緩めた。

「うーん、ドラマとかで見るのとは、ちょっと違いますね。意外と静かで、粛々と進んでいく感じですよ」

「へぇ、そうなんか」

「被告人って言われる人が座っていて、その人の弁護士と、検察官っていう攻める側の人が証拠とか証言を出して、裁判官が判断するんですよね。で、証人とかも呼ばれて話をするんですけど、結構淡々としてることが多いですね」

「淡々と……」武部が唸るように言った。

「なんか、もっとこう、白黒ハッキリさせる感じじゃねぇの?」

せつまは少し首をかしげた。

「まぁ、最終的にはそうですけど……なんていうか、すぐに『こいつが犯人!』って決めるんじゃなくて、じっくり証拠とか話を積み重ねていくんですよ。証言が矛盾していないかとか、証拠が本当に正しいのかとか……事件にもよりますけど、結構長くかかるんですよね」

「はぁ……やっぱ難しそうだな」

「ですね。ただ、言葉一つで流れが変わることもあるし、最終的に裁判官が下した判決によって、それが真実じゃなかったとしても判決がすべてとなっちゃいますし」

「そりゃ下手なこと言えねぇな」大津がポツリと呟き、煙草に火をつけた。

武部は腕を組んで何か考え込んでいる。

「そっか。じゃあ、もし今回の犯人も裁判にかけられるってなったら……」

せつまは頷いた。

「……どうなるんだろうな」

三人はそれぞれの思いを抱えながら、冷たい空気の中、喫煙所から詰所へ向かっていった。

 

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