紅に凍える街
冷たい風が容赦なく吹きつける作業現場。
せつまは肩をすくめながら、ポケットの中でかじかんだ手をこすった。
「さっぶいな〜、早く詰所に戻らないと指が動かなくなるわ」
「ほんとにな。冬の現場はこれがキツイんだよな」
大津がフッと白い息を吐きながら言う。武部は無言だが、顔つきは険しい。
「どうかしました? 武部さん」
「ん? いや、ニュース見たか? 近くで起きたあの少女の事件」
「ああ……少女が殺されたやつですか?」
一気に空気が変わり重くなった。
「まだ捕まってねぇんだよな、犯人」武部が呟く。
「物騒ですよね」せつまが相槌を打つ。
「うちの娘、まだ小学生なんだよ……最近は一人で外出させるのも心配なんだよな」
「そうですね……俺にも娘がいたら、外には出しません」
誰もが黙る。
吹き抜ける風の音が、やけに耳に残った。
「早く捕まってほしいな……」
大津のその一言に、せつまも武部も頷いた。
喫煙所までの道を歩きながら、大津がふと口を開いた。
「なぁ、せつま」
「はい?」
「お前、弁護士になるために勉強してんだろ? こういう事件の犯人が捕まったら、その後どうなるんだ?」
せつまは少し考えてから、ポケットに突っ込んだ手をギュッと握りしめた。
「うーん……俺もまだ勉強中なんで、ざっくりですけど……逮捕されたら取り調べが始まって、証拠とか証言が集められて、起訴されるかが決まって、裁判になったら検察が証拠出して、弁護士が弁護して、えーと……裁判官が有罪か無罪か決めるって感じですかね」
大津は「へぇ」と頷きながら、ポケットから煙草を取り出した。
「でもさ、もし捕まったヤツがやってなかったら?」
せつまは足を止め、大津に顔を向けた。