【前回の記事を読む】酒呑童子伝説は本当だったのか――都に運ばれた首級に残る、あまりにも大きな違和感とは

鬼の夜ばなし4 生きながら鬼となった、三人の女たちのつぶやき(『道成寺』『平家物語』『安達ケ原』より)

「でね、悔しいからあの寺の釣鐘(つりがね)の中に閉じ込めてやったわ。そしたらいつの間にかわたし、蛇になっちゃってて、気が付いたら辺り一面火の海だったのよ。うふふふ」

囲炉裏の炭が一瞬勢いよく燃え上がった。

まだあどけなさの残るこの娘には、藤色の小袖がよく似合っている。興味津々なのだろう。若さゆえの真っ直ぐさで、娘は話しながら反対側の女を始終眺めていた。

「まあ、それじゃ中のお人は、蒸し焼きじゃないの」

「あら、それでも足りないくらいよ。還俗(げんぞく)してわたしを嫁にするって嘘ついたんですもの、あいつ」 

娘の視線を受け流し、向かいの女は俯き加減に首を傾け、呆れたように笑っていた。女は死に装束の白絹の着物をまとい、頭には鉄輪(かなわ)をのせている。

「恋焦がれる炎とは、何もかもを焼き尽くしてしまうものですね」

しわがれた声がする。娘と女の間で茶を淹れている老婆だ。

「道成寺は、大変な騒ぎでしたろうに」

鉄瓶の湯気が老婆の深い皺を撫でていく。鉄輪の女に老婆は茶をすすめた。「ありがとう」礼を言って茶を受けとる女の頭がぐらつく。

「重たいでありましょうに。もういい加減、その鉄輪を外すがよろしかろうに」