ある日、担当医師から華菜のことを聞かれた。沙優が華菜を呼んで欲しいと言っているとのことだった。

「華菜は沙優が心から信頼を寄せている存在です。華菜の事は覚えているんでしょうか」

「はい、記憶の中にあるようです」

「わかりました、華菜に連絡します」

俺は、更にショックを隠しきれない状態に陥った。俺のことは記憶がないのに、華菜のことは覚えているなんて……

俺は華菜と連絡を取った。

「華菜、沙優の意識が戻った」

「ほんと、良かった」

「それが良くない」

「どういうこと?」

華菜は理解出来ないような反応だった。

「沙優は俺のことだけ覚えていないんだ」

言葉にすると余計に落ち込んだ。

「沙優は自己防衛本能で記憶障害を引き起こしている」

「つまり、貢とのことはスタートラインに戻っちゃったってこと?」

「ああ、そういうことだな」

「他の記憶はどこまで覚えているの?」

「華菜を呼んで欲しいと言ってるとのことだ」

「えっ、私?」

華菜の声は上擦っていた。

そして華菜を連れて病院へ向かった。俺は下の待合室で待機していた。

次回更新は3月22日(日)、22時の予定です。

 

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