「ご主人は一旦病室の外に出て頂けますか」

「先生、沙優はどうしたんでしょうか」

「一時的な記憶障害と思われます、刺激しては益々悪化致しますので、申し訳ありませんが、一旦外へお願いします」

俺は病室前の廊下で待機するように言われた。病室から先生と沙優の会話が聞こえてくる。

「大丈夫ですか」

「はい、大丈夫です。ちょっとビックリしただけです」

しばらくして俺は病室に戻った。

「あの方が沙優さんのご主人ですよ、覚えていませんか」

俺は担当医師から医局に呼び出されて、沙優の状況を聞かされた。沙優は困惑の表情で、全く思い出せない様子だったと、担当医師から聞かされた。

「沙優さんはショックで一時的に記憶障害を起こしています。何か沙優さんとの間でトラブルはなかったでしょうか」

俺は瑠美とのこと、ホテルにしばらく滞在していたことを担当医師に話した。

「以前付き合っていた女性とちょっとトラブルがあって、自分の気持ちの整理のためホテルに滞在していました。俺が留守の間に沙優は転倒して緊急搬送されました」

「そうでしたか、多分その時の忌まわしい記憶を忘れたいという自己防衛本能が記憶障害を引き起こしていると思われます」

「俺はどうすればいいでしょうか」

「南條さんはその以前お付き合いをしていた女性とのトラブルは解決されたのでしょうか」

「はい」

「そうですか。少しずつ、時間をかけて沙優さんに接していくしかないと思います」

「分かりました」

俺は自分を思い出して貰おうと、毎日必死に近づこうと試みたが、却って拒否されているようで落ち込んでいた。