恵子も彼女たちに励まされ、発言した。個人的にはいいにくいが、女性職員懇談会の名でやめるよう申し入れることはできないかという議論になった。
ところが、幹事たちがいい顔をしなかった。「不愉快な思いをしているということはわかりましたが、正直、どう伝えたものか難しいですね。別に女性だけを見てるわけじゃない、後輩が働く場にふさわしい服装か、男性も含めて見てるとかなんとか反論されたら、返しようがないでしょ?
懇談会として行動するのは難しいですね」。幹事はみんな五〇代以上。「私たちの世代はもっと露骨に女性だからと差別されたり、いやらしいことをされたりしてきて、そういう中でがんばって働いてきたのよ。視線くらい何よ」という言葉が喉まで出かかっている雰囲気が見てとれる。
「女の敵は女」。そんな言葉が恵子の脳裏に浮かんだ。だから、由香里が彼女の辛さをわかってくれる人たちの中で、初めてこの体験を話せて、本当によかったと恵子は思った。
由香里は、中学生のころから、できるだけ家にいる時間を短くするように行動したという。そんなとき仲間になってくれるのは、たいてい、家庭に困難を抱えた子どもだ。
たまり場に集まって、大人びた子どもがタバコを吸ったり、悪くするとシンナーを持ち込んだりする。タバコやシンナーを子どもに売るのは大人である。そういう大人とつながりができることが、タバコやシンナーの被害より怖い。
由香里も感化されて、髪を茶色く染めたり、制服のスカートの丈を極端に短くしたり、眉を細くそったりした。中には、暴力団の使い走りをしている若者と恋人同士になる仲間もいたという。
母はこうした由香里の変化をとても心配した。愛情たっぷりに育ててきたつもりなのに、何に不満があるのだろう。母はそんな目で由香里を見た。母には悪いと思ったが、どうしても家は安心していられる場所ではなく、たまり場にいる時間が長くなってしまう。
次回更新は3月18日(水)、21時の予定です。
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