【前回の記事を読む】寝室にあった体を運び出すと、ぼろぼろに崩れた。骨まで炭化し、通常ではあり得ない程の高温で焼かれたことがわかった。
サイコ4――人体発火
母の葬儀から喪が明けた麻利衣は賽子のマンションに引っ越し、今、あてがわれた部屋で荷物を整理しているところだった。本棚の上の棚に骨壺と母の遺影を飾り、その前に正座して彼女は手を合わせて祈りを捧げた。
「お母さん、いずれ、美瑛のお墓に入れてあげるからね」
その後、彼女は本棚に医学書を並べ始め、最後に父が残した12冊の古いノートを並べ始めた。そこへドクトルがやってきて脇に座り、彼女の作業を金色の瞳でじっと見つめていた。
「どうしたの、ドクトル」
ノートを並べ終えると麻利衣はドクトルの頭を撫でた。彼はわざとらしく大きな生あくびをして赤い喉を見せると、尻尾をぶるっと震わせて部屋から出て行った。
「変な猫」
部屋を片付け終えてリビングに行くと、ローテーブルを挟んで、賽子と鍬下がソファに座って向かい合っているところだった。賽子は腕組みをして目を閉じながら彼の話を聞いていた。
「鍬下さん、いらしてたんですね」
「ああ。もう大丈夫かい?」
「ええ。もう落ち着きました。今日は何か御用で?」
「ええ、事件のことで賽子さんに相談があって」
麻利衣は鍬下が「河原さん」ではなく、「賽子さん」と呼んだのに苦笑してしまった。
「事件って?」
鍬下は麻利衣に連続放火事件の詳細を改めて説明した。彼女は話を聞いている途中で、全くの一般人である自分に警視庁の刑事が捜査の極秘情報まで逐一教えてくれるのに優越感と背徳感の間を行ったり来たりしていた。
「確かに変な火災ですね。人間が火元で、しかも通常の火災ではありえないほど内部まで炭化しているなんて」
「これは人体発火だ」
賽子が目を開けて言い放った。
「人体発火?」