麻利衣はそれからも母をなんとか説得すべく努力を重ねたが、小百合は一切聞く耳を持たず、あっという間に一週間が過ぎてしまった。日曜日の夕方、小百合はスーパーの買い物袋を提げて上機嫌で部屋に帰ってきた。

「ただいま。今日はちゃんちゃん焼きよ。赤飯も炊くからね。もちろん甘納豆で」

「どうしたの。やけに機嫌がいいじゃない」

「だって今日、其田先生の治療が終わったのよ。先生が言うにはもう病気は完治したから何も心配いらないって。体調もすごくいいのよ。それを聞いたら急にお腹が空いちゃってさ。ちゃんちゃん焼きを急に食べたくなったわけ。お祝いだから焼酎も買ってきちゃった。あんたも飲むでしょ」

「お母さん、お願いだから病院に行って。気功で癌が完治したなんて、私、とても信じられない」

「いいわよ」

「え?」

「ちょうど私も病院で検査してもらいたいと思ってたところよ。だってこんなに調子がいいんだから、きっと癌も全部消えてしまっているはずよ。それに、もし癌が全部消えていたら、頭の固いあんたもさすがに其田先生のことを信じられるでしょ」

「分かった。その代わり、もし癌が消えていなかったらちゃんと病院で治療を受けるって約束して」

「分かった」

翌日の月曜日、麻利衣は再び千晶に造影CTを依頼した。

「こんなに短い間隔で検査しても変わりがあるはずないし、そもそも保険診療上も問題があるのよ」

「そこをなんとかお願い。これで気功が無意味だって分かったら、お母さん、今度こそ治療を受けるって約束したのよ」

麻利衣は手を合わせて頼み込んだ。

「しょうがないわね」