藤吉郎がしたり顔で意味深なことを言った。
しかし信長は、知らぬふりをして尋ねた。
「儂とそなたの仲じゃ。天守は今、人払いをしておる。構わん、忌憚なく申せ」
「本当によいでしょうか? 出自を含め、呆れたり嫌になったり憤ったりなさいませんか?」
「何を言うか? 儂は怒らんし嫌になったりはしない。だが嘘は駄目だ」
「は、誰にも話したくなかったのですが、卑しい出自なれども、殿の仰せとあれば包み隠さずお話しいたします。
私は、殿と出会った生駒屋敷より5里ほど南に下った尾張那古屋の中村の百姓、弥右衛門の長男で、天文5年か6年2月6日の誕生と聞いています」
「そうか、儂より3つ下か、話を続けよ」
「両親は田畑の仕事で忙しく、暦もよくわからぬゆえ、年齢は正確には知りません」
「うむ、儂は民、百姓が忙しく仕事がきついこともよく承知しておるぞ」
「父、弥右衛門(やえもん)は、戦働きで戦死しました。それゆえ、父の顔は覚えていません。母は再婚し後妻となりました。義理の父がおり、腹違いの弟と妹がいます」
「儂も苦労して清州城を手にしたが、帥も苦労したようだのう」と慰める信長に秀吉は続けた。
「母が再婚後に弟妹が生まれ、貧しさに拍車がかかった私は家で肩身が狭くなり、困窮を抜け出すため、亡き父の形見の巾着袋(きんちゃくふくろ)に入った永楽銭1万貫(約10万円)を貰い受け修行と商いで諸国を流浪しました」
次回更新は2月28日(土)、19時の予定です。
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