【前回記事を読む】「生きがいとは何か?」がわかるワーク。まず、今までの人生で嬉しかったことや楽しかったこと、苦しかったことを挙げていき…
第一章
マズローの欲求の段階から見た「生きる目的」
五 人間にとって幸福とはどういうことか
マズローは、「自己実現」を追求するためには、持てる能力を最大限に発揮して、人間の最高次元の欲求を満足させることが自分自身のためでもあり、また社会のためでもあると述べている。そして、生きがいに満ちた人生を送り、また人間として理想的な状態で生きていく目標であるとも言っている。
では、人間の最高次元の欲求が満足できた時、人々ははたして幸福になるのであろうか。別の切り口から「自己実現」を見るために、精神病理学者カール・G・ユングの「幸せになるための六つの条件」を当てはめてみよう。
1.健康であること。
2.自分がこれでいいと思うぐらいのお金を持っていること。
3.人間関係が楽しいこと。
4.芸術の素晴らしさや、ワインや料理などのおいしさや楽しさがわかる。
5.朝起きて、しなくてはならないものを持っている。
6.困ったことや嫌なことが起きた時、それを乗り越えるために必要な哲学的あるいは宗教的に頼る術(すべ)を持っているか、困難を解決するだけの精神的な能力(強さ)を身につけていること。
以上六つの条件は、「自己実現」を達成した人なら、全部でなくてもほとんどクリアしているだろう。
ところで、この六つの条件の内、いくつか足りないものがある人は、幸福ではないのだろうか。周囲の人たちから「あの人は不運な人だ」とか、「不幸な人だ」と思われている人の中には、確かに、この六つの条件の内、いくつかが欠けている人もいる。だが、はたして本人はそのように思っているのであろうか。
人間には四つの苦しみがあると言われている。「生老病死」と言われる四苦であって、人間なら誰しもが生涯の内にこの苦を受けることになる。また、貧困の中で生活を送っている人もいれば、生まれながらに身体に障害を持っている人もいる。あるいは、不治の病におかされ、身体の自由を失いながらも世界最高水準の宇宙物理学者となったホーキング博士のような人もいる。
六条件が揃わなければ幸福になれないということは絶対にない。この条件が揃っているのに越したことはないが、自分が人生の価値基準をどこに置くかによって、人それぞれに幸福感は変わってくる。