「そうそう貞義が今度配属されるのは横浜海軍航空隊なの。横浜といったら奈津ちゃんの住んでいる所からも近いのかしら」突然叔母は奈津に尋ねた。
「私の学校は山手だし、根岸まで行けば海軍基地は見えるかもしれない。日ノ出町からも湘南電車でゆけばそう遠くはないと思うけど」
「だったら貞義に届けてくれない。お見合い写真なの」ノブは都合が良かったとばかり喜んだ。
「いいわ。貞義さんもお嫁さんをもらうのですか」
「そらそうよ。貞義も治樹さんとは年は二つしか変わらないでしょ。治樹さんも貴美さんが嫁に来てもう半年過ぎたしね。そろそろ考えておかないと。できたら奈津ちゃんのような人が来てくれればと思っていたのだけど……」ノブの言葉がお世辞なのは分かったが、奈津はまんざらでもなかった。
「ええ、そんなの。私、貞義さんとは従妹よ」奈津は顔を赤らめながら答えた。
「そうね、それに奈津ちゃんには自分の夢があるのよね。邪魔しちゃ悪いわね」叔母は何か引っかかるような言い方をした。
それは叔母にも若い時期に夢があり、それが果たせなかったことに対する悔く やみが残っているように奈津には思えた。
「叔母さんの頼みだから届けてあげなさい」父と兄も奈津に勧めた。
奈津は従兄の貞義にお見合い写真を届けることを快く承諾した。むしろ今の従兄に一度会ってみたいと思った。それに、横浜の海軍航空隊がどんなところかも関心があった。