【前回の記事を読む】私とおなかの子はあの時死んだ――長い時を経て、ようやく再会した彼はすべてを忘れていた……

あの世で、君と結ばれる

俺も、嬉しかった。この世に産まれることが出来なかった子の名を思い出した。かわいそうな我が子N雄、そしてM子。

苦労して何とか思い出すことが出来た。俺は認知症ではない。家族にそう自慢したいが、絶対に知られてはいけないことだ。

どんな子だったのかな。俺に似ていただろうか。それとも、M子か。もっとも、彼女の顔は、俺の記憶においては、未だにはっきりしたものではない。

そのことを思い出した以上、二人の墓参りをしなければならない。彼女の実家の住所・電話番号を改めて調べ、きちんと挨拶して、お墓へ行き、菩提を弔わねばならない。

そのことを口にしてはいないのに、

「ありがとう」

と、彼女からお礼を言われた。

俺の心の中がわかるのかと思ったら、

「又、ここに来てください」

引き続いた言葉で、彼女は俺がここへ来たことへの礼を述べたのだとわかった。

「又、もっと多く思い出してくださいね」

M子の声は、そこで終わった。

東の空が、少し明るくなってきた。

彼女は、それ以上、話せないのだろう。それが亡霊の世界の掟なのだろう。