レイトン卿との対称性~優美な退廃VS重厚な躍動
ウォッツの肖像画
上に触れた通り居住区域の近接性や知己の範囲の重なりから、ウォッツとレイトン卿はかなり親しく交流していた。
ドロシー・ディーン Dorothy Dene という女優をモデルとしてレイトンは愛顧し、ウォッツに紹介してもいる。その結果ウォッツは『ドロシー・ディーンの肖像』A Portrait of Dorothy Dene(1880頃)と題した肖像画を一点描いている。
またウォッツはレイトン卿自身の肖像画(制作年代不詳)も描いたことがある。それはこの清濁併せ呑んだ傑物の面影をかなり正確に伝えてはいるが、ウォッツの肖像画の中ではさほど上質なものとはいえない。
ついでながら、ウォッツは肖像画の名手でもあった。残した肖像画は三百点を超え、その数の多さは彼の必要とした現金収入の関数でもある。
他方で、生前に肖像画の優品を国民肖像絵画館 National Portrait Gallery(以下NPG)に寄付している。このような慈善事業も他の「四天王」には似つかわしくない。
ヴィクトリア朝の「名士の殿堂」という自作の企画に従って次々に制作された画のモデルとなった人々の中には、カーライル、テニスン、ブラウニング、ラスキン、アーノルド、メレディスらの文人や、画家D・G・ロセッティ、J・E・ミレイもいた。
特に、マニング枢機卿(1882)や第七代デボンシャー公ウイリアム・キャヴェンディッシュ(1883)のような名士の肖像画の評価が高い。
相手が宗教家でも貴族でも、この画家は身分や地位というフィルターを通さない生の人間性を見抜いてそれを描き切っているからである。
2004年にNPGが企画した没後百年記念回顧展に出展された数多くの女性の肖像画は、その質の高さで見る者を圧倒したという。
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