【前回記事を読む】憲法十三条と「公共の福祉」が孕む問題点――「切り札」としての権利をめぐって

第1章 憲法が保障する権利

十四条一項の射程

憲法十四条一項は

「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定している。

十四条一項とその他諸々の権利との関係について、樋口・憲法(209頁)は、

「人権の中核的価値である個人の尊厳は、当然に、諸個人の平等を要請する。

……従ってまた、憲法第一四条一項は、平等権を保障する条項であると同時に、個人の尊厳から流出する他の憲法上の権利にとっての包括的原則をも提供している。

その意味で、一四条一項は、……広く他の権利条項にとっての原則規定ともなっている。」

として、十四条一項は、他の諸々の権利の基盤になっている面があるとする。

また、長谷部・憲法(168頁)は

「個人は、それぞれ自分の考えるところに従って自分の生き方を決め、それを自ら生きるという点で、根源的に平等な存在である。

この点については、いかなる差別も認められるべきではない。」

と、切り札としての権利の核心である個人の根源的な平等性と、差別されない権利の関係に言及している。

問題意識

これまで、憲法が保障する権利を支える価値観の中核に個人の人格の根源的な平等性があり、それは切り札としての権利として憲法に現れること、そして十四条一項(平等権、差別されない権利)は、切り札としての権利を体現する特別な権利である可能性があることを見てきた。

個人の尊重あるいは個人の人格の根源的な平等性が、憲法を支える価値観・原理であることに異議はない。