【前回記事を読む】英語の苦手意識を克服! 高知西高校で広まった和訳先渡し方式がもたらす教育的効果と限界とは?

第一部 英語教育 30年の変遷

第2章 「訳して読んで」音読重視の2000年代前半

第4節│理解可能なインプットと  クラッシェンのInput仮説理論

Natural Approachの理念と実践

Natural Approachの実践では、特に以下の点に注意が払われます。

(1)理解可能なインプットを提供する:

テキストや会話が学習者の理解力に合ったレベルで、視覚情報(ジェスチャー、絵、写真)や背景知識を活用しながら、学習者が「理解できること」に重点を置きます。

(2)リラックスした学習環境を整える:

学習者にプレッシャーをかけることなく、自然に言語を吸収させる環境を用意することで、言語への不安感(Language Anxiety)を低減し、学習意欲を引き出します。

(3)エラーを許容する:

学習者がエラーを恐れずに言語を使えるよう、正確性よりもコミュニケーションの意図を優先します。

このような理念は、文法や単語の暗記といった従来の教育法とは異なり、学習者が「英語を使う感覚」を養うことを目指した指導法です。

特に2000年代前半に、音読を通じて「意味を理解しながら英語を学ぶ」ことが重要視され始めたのは、クラッシェンの理論に多くの影響を受けたと考えられます。

音読との関連性

2000年代前半に注目された「音読指導」は、表面的には学習者が単に英語を声に出して読む活動のように見えますが、実際には理解可能なインプットを強化する手法としても機能します。

第2節で解説したように、音読の指導法には、リピーティング(Repeating)やシャドーイング(Shadowing)、リード・アンド・ルックアップ(Read and Look-up)など、さまざまな種類がありますが、これらの活動を通じて学習者は「聴覚」と「視覚」を同時に使いながら、言語を理解するプロセスを経験します。