はじめに
近年、社会は目まぐるしい速度で急速に変化を遂げています。教育界における変化もまた同様であり、多くの人々がその変化に注目しています。
特に英語教育は、学校関係者だけでなく、広く一般社会においても重要なトピックとして関心が高まっています。インターネットの普及により、パソコンやスマートフォンを用いて誰もがどこでも手軽に英語学習ができる時代になりました。
これにより、学校の教師だけでなく、説明力に長けた一般の人々による「授業」が新たな学習リソースとしても台頭してきています。
私は長年にわたり、民間教育産業(学習塾)や中学・高等学校、そして大学で、幅広い年齢層の学習者に英語を教えてきました。
特に、21年間にわたって勤めた高等学校での英語教育の変化のスピードは顕著であり、自分自身が教育現場での実践を通じて築いた指導法の変化や英語教育の視点は、教育関係者だけでなく広くさまざまなバックグラウンドを持つ読者の方々にも興味深いものとなると思っています。
本書では、私の英語教育のキャリアを通じて、過去30年にわたる英語教育の変遷、現在の最新動向、そして将来の展望について論じています。学校関係者のみならず、英語教育に興味がある方や、効果的な学習法を模索している方々にもぜひお読みいただければ幸いです。
本書の活用方法
本書は、筆者の経験に基づき、英語教育の30 年間の変遷、現代の教育実践、そして将来の展望を網羅しています。各章ごとに異なるテーマが設けられており、読者の方のニーズに応じて自由に読み進められる構成となっています。以下に、各章の内容に沿った効果的な読み進め方をご案内します。
「第1部 英語教育30年の変遷」では、1990年代から2010年代までの英語教育の変遷を時代ごとに分け、主要な教育手法や指導理論を振り返っています。
この第1部では、英語教育に携わる教師や教育関係者が、それぞれの時代にどのような方法が効果的だったかを学び、現在の指導に生かせる知見を得ることができます。特にコラムでは、時代ごとの効果的な学習方法が整理されているので、実践的なヒントを得たい方はコラムに注目しながら読み進めてください。
第1章では、文法訳読法が主流だった1990 年代を取り上げ、従来の「読んで訳す」スタイルを反省的に捉えています。次の第2章では、「訳して読んで」の音読を取り入れた2000年代前半のさまざまな教育方法と学習方法が紹介されています。
第3章では、アウトプット活動に重点を置いた2000年代後半の指導方法、続く第4章では、4技能5領域統合型の指導法・学習法が解説されており、プレゼンテーションやディベートを活用する授業モデルが具体的に示されています。
第5章では、2010年代後半に到来したアクティブラーニングの動向を学びます。学習者主体の教育が求められる現代において、この内容は特に重要です。
第6章では、デジタル化とICT活用の台頭に触れ、現代の教育におけるテクノロジーの役割を考えます。それぞれの章を通して、時代ごとの英語教育の進化を確認し、現在の授業にどう応用できるかを考えてみてください。