【前回の記事を読む】「先生、何歳ですか~?」「心は20歳だ」教室は静まり返った——「この嘘つき野郎め」生徒たちの心の声が聞こえてきた。

小さな物語

【子どもの頃1】夢に向かって

コウの夢は、「将棋の棋士」になることだ。コウは、三歳の頃から将棋を指し始めた。

将棋は、とうちゃんが兄ちゃんと指している所を見たり、兄ちゃんと指したりしながら、将棋の駒の動きを覚えた。

まるで、言葉を覚えるかのように将棋の駒の動きも覚えた。

四歳の頃に、おばあちゃんがなくなった。火葬場で知らないおじさんから「将棋を指そうか」と言われた。コウは「いいよ」と言って、将棋を指した。

おじさんとの将棋は互角だった。一進一退の闘いだった。

でも、将棋の駒の動きや駒の心を知っているコウは、負けるはずがなかった。

最後は、おじさんが、笑顔で言った。「負けました。コウくんは、強いね」

コウは、心の底から喜び自信を持った。おじさんが、上手に負けてくれたことには気付かなかった。

コウは将棋を続けた。小学生や中学生のときには、ライバルの将棋友達や二人の兄ちゃんたちと、将棋の腕を競い合った。

さすがに、兄ちゃんたちとの将棋は、負けることの方が多かった。時々、勝つこともあった。二歳上の兄ちゃんと四歳上の兄ちゃんである。二人とも優しい兄ちゃんだった。

二歳上の兄ちゃんは、特に優しくて何度も何度も将棋を指してくれた。兄ちゃんたちから鍛えられたお陰で、同級生との将棋では負けることよりも勝つことの方が多かった。

コウは中学三年生となった。久しぶりに大人と将棋を指した。姉ちゃんの彼氏である。

将棋は一進一退だった。姉ちゃんの彼氏も本気だった。九歳ほど年上だし、彼女の前で負けるわけにはいかない。

力将棋の結果、ぎりぎりだったけれども、コウは姉ちゃんの彼氏に勝つことができた。

この頃は、あまり将棋を指していなかったが、この将棋で将棋勘を取り戻すことができた。

次の日に、長崎新聞社主催の第二回長崎市中学生将棋選手権大会が行われた。その大会で勝ち続けた。強敵の同級生であるライバル二人は、途中で姿を消した。

コウは決勝トーナメントへ進み、見事に優勝した。心から嬉しかった。

次の日に、長崎新聞に写真入りでインタビュー記事が掲載された。

中学校に戻ると、普段は話しかけてこない先生にトイレで、声をかけられた。「すごいな」と笑顔で喜んでもらった。

高校は進学校へ進んだ。中学二年生の頃は「夢はプロの将棋の棋士」だった。

しかし、高校二年生の頃に「夢は小学校の先生」に変わっていた。

高校卒業後、国立長崎大学教育学部小学校課程へ見事に進学することができた。

大学では、教育哲学を中心に学びを進めた。

小学校の先生を三十六年間続けた後に、幼稚園副園長を数ヶ月務めた。それから大学の採用試験に挑戦した。今は大学の教壇に立っている。

子どもの頃の夢は、二つあった。一つは「将棋の棋士」である。もう一つは「学者」であった。

コウは今でも、自分の夢に向かって挑戦し続けている。自分という小さな花を咲かせるために。