【前回の記事を読む】“違い”を超えて「仲良くしようよ」——柴犬コタローと8匹の猫が教えてくれる、思いやりの心【寓話】
小さな物語
【ある日の教室1】ナディと若き仲間たち
留学生のナディが授業中に、ふと思いついたかのようにコウ先生に言った。
「先生、私たちのために物語を作ってくれないんですか。先生、お金になる仕事は、するのに」
ナディの言葉から、
「お金にならない仕事は、しないんですね」という気持ちが伝わってきた。
私たち留学生のために、純粋な気持ちで物語や詩を書いてくれませんか、お願いです。そんな心の声が聴こえてきた。まいったなと頭をかいたコウ先生は、笑顔を浮かべてペンを取った。
ナディは明るく笑顔の素敵な女の子だ。いや、女子学生だ。向学心に燃えている。日本の大学に通っているが、豊かな発想力で表現力もありユーモアもある。そんなナディはクラスの人気者だ。
なぜなら、このクラスには女性が一人しかいないからだ。他の学生は、イケメンのシンとタルシカ、それに、たくましいエドとサプの若き男性だ。みな笑顔があり心優しい。五人の若き優秀な学生は「日本の文学」を学んでいる。担当のコウ先生も心若き先生だ。あるときナディは
「先生、何歳ですか」と尋ねた。すると、コウ先生は迷わず笑顔で応えた。
「二十歳だ」
ナディは、言った。
「あ~。そうですか」
そのときのイントネーションが何と素晴らしいことか。
「あ~、そうなんですか。本当のことを言わないんですね。この嘘つき野郎め」
というような心の声が巧みに聴こえてきた。そんな若きナディと若き青年たちは、心だけ若いコウ先生と共に宮沢賢治の「雨ニモマケズ」について学びを深めていた。あるとき、コウ先生は言った。
「私たちも詩を作ろうではないか。宮沢賢治のように」
若き六人は、負けない心を表現した。
負けない心
大好きな人にも負けない(シン)
美味しい食べ物にも負けない(サプ)
女の子の彼氏にも負けない(エド)
美人にも負けない(タル)
悪夢にも負けない(ナディ)
ナディさんにも負けない(コウ先生)
私はそんな人になりたい
ナディは笑顔を浮かべながら言った。
「先生は、私に負けないんですね」