「よかった。君が幸せに生きてくれさえすれば私はもう何も思い残すことはないよ。じゃあ、最後に私の健康について占ってもらおうか。一体あとどのくらい生きられるのか」

「お父様、そんなこと言わないで。私、この人の占いなんか信じられません。病院のお医者様の言うことが正しいと思います。手術を受けてください。きっとよくなってまた私たちと楽しく生きられるはずです」

ひとみは崇夫の手を取って必死に懇願したが、彼はその手を握り返し笑顔で答えた。

「ひとみ、これはもう決まったことなんだ。私は手術は受けない。残りの人生を君と一緒に過ごしたい。君にお願いした仕事ならここでもできる。これから私が死ぬまでこの家で一緒に暮らしてくれないか。そのために私はここに引っ越したんだよ」

「お父様……」

ひとみは崇夫の胸に顔を埋め涙を流した。

「では、お願いするよ」

「かしこまりました」

華怜はしばらく瞑目した後おもむろに一枚のカードを引き、めくった。そのカードには白馬に跨り黒い旗を掲げ、甲冑を身に纏った骸骨が描かれていた。白馬の足元には複数の死体が転がって放置されていた。

「これは……そんなまさか……」

華怜は瞠目したまま言葉を失っていた。

「どうしたんだ? 気にすることはない。はっきり言ってくれ」

「言えません」

華怜は身を震わせていた。

「どうしたんだ、君らしくもない。私にはもう怖いものなんかないんだ。さあ、早く占いの結果を言ってくれ」

「死神、正位置……旦那様は……今夜午前0時にお亡くなりになります」

全員が驚いて顔を上げた。

「何だって? それはおかしい。君は私の余命はあと1年程だと言ったじゃないか」

崇夫が声をうわずらせて抗議した。

「前回占った時は1年以内としか分かりませんでしたが、今回の占いではっきりと生命の期限が分かったのです。間違いありません。旦那様は午前0時にお亡くなりになります」

崇夫は驚きのあまり顔は土気色になり、口をぽかんと開け、占い師の顔を呆然と見つめていた。ひとみも顔を真っ青にしていた。すると彼の顔はみるみるうちに真っ赤になって怒気を孕み、椅子の肘掛を両手で叩くようにしてやにわに立ち上がった。

「そんな馬鹿なことがあるか! おまえがあと1年の命だと言うからひとみとの最後の生活を楽しみにしていろいろ準備していたんだ! 

それをあと3時間の命だと? 馬鹿にするのもいい加減にしろ! やっぱりおまえはインチキ占い師だったんだな。もういい。おまえはクビだ! 私があと3時間で死ぬだと? そうやすやすと死んでたまるか! 絶対に生きてひとみと残りの人生を楽しむんだ」

「運命は既に決まっています。もう覆すことはできません」

華怜はうつむいたまま言った。

次回更新は2月2日(月)、21時の予定です。

 

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