キモッペは一体何が起こったのかよく分かりませんが、何かヤイラがお母さんを怒らせるようなことをしたんだと思いました。
そして、巣穴に入ろうとしたら、キモッペに対してもお母さんが牙を剥いて唸って来るのです。こんな怖いお母さんを見たことがありません。かみ殺されるんじゃないかと身の危険を感じるほどでした。
巣穴に入ることも近づくこともできないので、キモッペはとても寂しい気持ちになりました。仕方なく別の巣穴を探しにあらぬ方向に向けてトボトボ歩き出しました。
その途中でお父さんキツネが草むらから飛び出してきて傍にやって来て「キモッペ、これはなあ、キタキツネの子供たちが生まれて4か月目の頃に、必ずお母さんから受ける“子別れの儀式”というもんだ。お前は2度とお母さんの傍に戻ることはできないし、お父さんともここでお別れだ」と言った切り、草むらの中に姿を消してしまいました。
ヤイラも行方が分からず、キモッペは寂しさが胸に溢れて来て、涙が自然と出てきました。キモッペは前から外に飛び出していくことを夢見ていましたが、いざ、その時を迎えると心は何とも言えない切なさを感じました。
もっとお父さんやお母さんに甘えたかったのに、そんなことは言ってられません。独り立ちするには、まず獲物を探すことも大事でしたが、キモッペは前から太陽が一体どこからやって来るのか知りたくて、どちらの方向に進んで行くか全く迷うことなく、先ずはカムイヌプリから太陽の上がって来る東に向かいました。餌も多くて食べることに苦労しませんでした。
喉が渇くことも多かったので、水に困らないよう、川沿いにどんどん東に向かって行きました。太陽は知らない内に空を赤く染めて、どこかに消えるように沈んでしまうので、夜には怖い生き物に出合わないように巣穴を掘ったり、木の陰に隠れて過ごしました。
お母さんとお父さんと一緒に生活していた時には5回も巣穴の引っ越しを経験して来たので、天敵の標的にならないための一番安全な方法が何なのかを学習して学んでいました。