理子は歩きながら、これまでの人生を振り返っていた。自分は可愛くもないし、みんなにちやほやされるポジションでもない。
小学校5年生の頃、クラスの男子が『可愛い女子リスト』なるものを作っていたのを見た。自分がそれに入っておらず、下の方に名前があるのを見てしまったことで改めて自分のブスさを悲観した。他人から見てもこの顔は可愛くないのだと、そこから見られることに自信をなくした。
そのことを母親に打ち明けた。せめて親は自分のことを可愛いと言ってくれるのではないかと思っていた。それでも母親は『可愛く生んであげられなくてごめんね』と理子に言った。母親に謝られたことでより一層、自分は心底可愛くないのだということを痛感した。
可愛いアイドルが好きで、自分もそうなりたいと思っていた時期もある理子にとっては、『可愛い』ことから距離を置く必要があった。
中には、『可愛くなりたい』と自分の欲求に素直になって、自分磨きをする人もいる。しかし、理子は違った。周囲から『勘違いしたブス』だと認識される方が怖かったのだ。
それは『可愛い女子リスト』を見た下位の女子が男子に抗議した際、『あいつはブスのくせに生意気』だと悪口を言われていたのを見ていたからだった。
それから『自分のことを可愛いと勘違いしている』と思われるのが嫌で、徹底的に『わきまえたブス』を演じてきた。
中学生で「私ブスだからさ~」と自ら可愛い子の引き立て役を買って出るようになった。可愛くなければ、みんなからいじられるようなキャラじゃないと愛されないのだと思った。
母親からも『あなたは顔では選ばれないから、やり方を考えなさい』と言われたことも影響しているのだろう。
そしてみんなに好かれようとした結果、自分はこのキャラじゃないと駄目なんだと思うようになった。
(嫌なことは嫌、ってちゃんと主張しろ……か。そうだな、確かに。私は他の人の目を気にしすぎてたかもしれない。可愛くなりたいなら、可愛くなりたいって素直に思えたら良かった……)
もし自分が違う方向を選んでいたら、可愛くなりたいと思って素直に努力していたら、こういうことにもならなかっただろう。
(昨日から、泣きっぱなしだ……)
溢れ出す涙を拭いながら、理子は夜の街を歩き続けた。
次回更新は2月5日(木)、11時の予定です。