【前回の記事を読む】「入らなくて正解。あそこはかなりヤバそうなの」「ヤバいって?」息子が入るかもしれなかった病棟には"噂"があった

第三章 噂

けげんそうなまさ子の顔を見て、友美は少し冗談めかした。

「ただの噂よ。ランドリー室で聞いたの。あそこ、お掃除のおばちゃんとかもいて、いろいろ噂話するから。まあ、マユツバだよね。……でも、聞いちゃうと、気になるじゃない。縁起の悪い話だし。だから私、二人部屋どうですか、そうでなければ八人部屋って言われた時は、すぐに承諾したんだ」

まさ子は、とんでもない噂だと憤慨した。人の生き死にを、こんな形でお喋りの道具にするなんて! だいたい、一生懸命やってくれている病院の方々に失礼だ。人の尻馬に乗って、無責任に噂を広げる友美にも、腹が立った。

「でも……ここは病院なんだし、お年寄りが多いところなら、亡くなる確率が高くなっても仕方がないんじゃない? きっとそういうことなんじゃ……」

まさ子の生真面目さを察し、友美はさらにトーンを変え、笑ってごまかした。

「そうだね。噂というより、都市伝説? ごめんね、変な話をして。あたしバカだから、すぐにいろいろ信じちゃって。忘れて!」

友美は食べ終わったアイスのカップをゴミ箱に捨てた。

「さあ、そろそろ達也が帰ってくるかな? ところで、透くんママは、アレ、してる?」

「アレって?」

「ほら、つ・け・と・ど・け」

「それはやっちゃいけないってナースステーションに」

「あれは建前よ。やっといた方がいいわよ」

「そうなの?」