【前回の記事を読む】テスト範囲を明確に教えても赤点をとる生徒がいた。先生は手慣れたもので、基準点に達するまで同じ問題の追試験を繰り返し…
二 清水の爺ちゃん高校の先生になる
「何言ってる。お前が、心配してどうすんだ。自分のことを心配しろよ」
「そうだよ。でも、普通(ふつう)であればいいのに変わっているよ。清水先生は」
「その変わっているところがいいんだよ。俺(おれ)たちに先生のように夢中(むちゅう)になれるものがあるかい。俺たちは、何にでもすぐ飽(あ)きるけれども、先生はぶれないよ」
「そうだよなア。俺なんかテレビを見てもまとまった番組(ばんぐみ)など見たことがない。すぐチャンネルを変えてしまう」
「笑っちゃうよ、植物を手にしている先生は、まるで玩具(おもちゃ)を持って喜んでいる赤ん坊だよ」
生徒たちから、毎回のようにからかわれても清水先生は、何ら心が痛(いた)むことはなかった。
清水先生は、女性は嫌(きら)いではなかったが、清水先生の風貌(ふうぼう)や毎日の行動を理解(りかい)して生涯(しょうがい)を共にしてくれる女性はなかなかではなく、全く現れることはなかった。
いや、正直に話すと一人だけいるにはいた。
生徒から、独身(どくしん)で面白い先生がいるという噂(うわさ)を聞いた、町内会で役員をしているお節介(せっかい)な山本さんの口利(くちき)きで、とりあえず喫茶店(きっさてん)で女性と会うことになった。
かなり美しい人であったが、清水先生の服装(ふくそう)と、最初から最後まで「山野草(さんやそう)の独演会(どくえんかい)」だったと呆(あき)れられたことがあった。
結果は山本さんから聞くまでのことはなかった。