我が国における発酵学の権威、かつ、私が私淑してやまない小泉武夫先生は、沖縄の一癖も二癖もある泡盛のルーツはタイにあると、その著書『銘酒誕生 白酒と焼酎』(講談社現代新書)のなかで披露し、蒸留酒に関する蘊蓄(うんちく)を傾けています。また、著名なソムリエの一人田崎真也さんも、クセのある泡盛が大好きだとしております。

志村けんさんのアクの強い酒、小泉武夫先生や田崎真也さんの好きなクセのある泡盛と同様にドリアンもある種のアクがあるからこそ蠱惑的(こわくてき)魅力があるのだと思います。

なお、ドリアンにも食べるに適した季節があり、季節外れの時期になってしまうと入手自体なかなか困難となってしまいます。

バンコクの中華街、通称「ヤワラート」に足を踏み入れますと、特に、華僑(かきょう)系の人たちがドリアンを好むせいでしょうか、ドリアンを一年中販売している専門店があるのです。

ヤワラートの中心街を貫いている大通りに繋がっているパドゥング・ダオという名の小さな通りには、タイ式すき焼きで有名な「テキサス」という店や、アジアの歌姫テレサ・テンのテープなど中華系の音楽テープを販売しているお店が店を構え、その通りにはドリアンを売る小さな屋台が店を出していました。

その屋台にて季節外れに買うドリアンの値段は、通常よりかなり高額なのですが、特に、ガーン・ヤオは、人気が高いようで、数あるドリアンの種類のなかでも一番高価な値段で売買されていたと記憶しています。

そのようなドリアン体験を持つ私ですが、バンコクおよび、その後に続くニューヨークでの生活を経て日本に帰国してみますと、なんの因果か、バンコクに語学留学の経験があり、かつ、ドリアン大好きな邦人女性と結婚することになっていました。

そして、二度目のバンコク勤務の際は、その山の神にも同行してもらうこととなったのです。

 

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