【前回の記事を読む】足を滑らせ、そのまま谷底へ落下!——と思いきや"何か"が私を受け止めた。そして次の瞬間…

第3章 目覚めた勇士

3 異世界と四種の神器(じんぎ)

「ちがいます。あなたがたの守護神龍神藤山氏(しゅごしんりゅうじんふじやまし)です」

厳(きび)しいみどりの声があたりを森閑 (しんかん)とさせた。修司は心の中にひそむ鬼(おに)が、顔をのぞかせるのを感じた。そして、四人の顔に恐(おそ)れの表情がうかんだ。

「藤山先生の瞳(ひとみ)に炎(ほのお)が見えるわ」波奈がつぶやいた。

修司はなにがなんだかサッパリわからなかったが、大きな声を出した。

「龍神藤山 (りゅうじんふじやま)です。よろしく」

修司はかすかに笑っている青山みどりの心を感じた。

翌日、修司は理科準備室で、昨日の不思議なできごとを思い出していた。

青山みどりは四人に告げていた。

……自分が異世界で、現代のヌナカワヒメを承継(けいしょう)したこと。四人がヌナカワヒメのいる異世界と行き来できること。

異世界では、ヌナカワヒメの一族が、闇(やみ)の者たちと戦いつづけていること。そして、四人も勇士としてこの戦いに加わる日が近いこと。

ナンデモ研究会の四人には、勇士としての力が秘められていて、四人がそろうとその力を発揮できること。たがいに心の声を伝えあうこともできること。

異世界は心の世界であるが、特別な能力を持つ者は異世界と現実の世界で同時に活動できるだけでなく、異世界から現実の世界に働きかけができること。ただ、ふつうの々人(ひとびと)は異世界を見ることができない……。

修司はこのことについて考えてみた。たとえば職員室の自分の席で子どもたちのノートの点検をしているとき、心の中の自分が席から立ち上がって、となりの同僚 (どうりょう)の肩(かた)を後ろからポンと軽くたたく。となりの同僚 (どうりょう)は後ろをふり返るが、だれもいない。

修司を見るが、修司はノートを点検中。こんな光景を想像して、科学的な考え方や見方を大事にしている修司は、思わず苦笑いをうかべた。

不思議なことだが、昨日は修司も異世界に巻きこまれてしまった。何が起こったのか、サッパリわからなくてあわてた。

あんなことがあったのに、ナンデモ研究会の四人は、何もなかったようにクラスでふるまっている。

六月の第二土曜日。修司はまたひょうたん池公園に出かけた。おだやかな日だった。修司は九頭龍池(くずりゅういけ)に流れこんでいる小川にかかっている小さな木の橋の先にある九頭龍権現(くずりゅうごんげん)に向かった。

修司がその橋を渡(わた)りかけたとき、フッとまわりの景色がゆれた。

ひょうたん池の水辺では親子連れの姿が見えた。ごくふつうの風景だった。

しかし、修司は自分が異世界にいることを感じていた。そして、恐怖 (きょうふ)を感じた。心の奥(おく)から亡き母がいつも気にかけていた鬼(おに)が出ようとしてた。

修司は、心の奥(おく)にひそんでいた鬼(おに)をたしかに見た。そして、修司は自分が九頭龍(くずりゅう)であることを悟(さと)った。