鼻の下を伸ばしてんじゃねえよじじい、そして何やってたんだ。私は舌打ちした。
それにしてもこのカフエーというスタイル、現代の夜の店に酷似している様に感じた。私も接待で、クラブやラウンジを何度か利用したことがあった。正直性には合わなかったが、季節毎にイベントデーがあった。
クリスマスにはサンタ姿、ハロウィンには仮装、年明けには着物、七夕には浴衣と、夜の蝶達が客の目を楽しませる訳だ。大正期のひな祭りのコスプレと全く同じ図式で、一世紀前から、すでに営業の型が出来ていた訳で、私はそこに感心した。
もてない私は、ご先祖様の惚気話には閉口したが、「簡易西洋料理一式」には俄然興味を覚えた。
日本の洋食は独特で、コロッケもエビフライも、オムライスも豚カツも、ラーメンもパスタも、海外から来て、我が国で独自の進化を遂げた。
我が国は、原材料輸入加工品輸出の国だ。その精神は、食のみならず文化全般に波及しているのではないか。金魚、盆栽、印籠、全て中国から来たが、今はメイド・イン・ジャパンとして世界で認知されている。
将棋もそうだ。古代インドで成立した、チャトランガというゲームが、将棋の原型だ。インドから欧州に渡りチェスとなった。中国に渡ると象棋となる。エチオピアのセヌテレジ、タイのマークルック、モンゴルのシャタル。それぞれの国で、チャトランガから派生したボードゲームがある。
そして日本の将棋も、同様のゲームだが、唯一異なるのが、取った駒を使えることだ。世界唯一であり、これこそが、チャトランガ系統のゲームの中で、最も面白い所以だ。
そしてチェスはゲーム後、白と黒の駒を分けてケースに収める。将棋は敵も味方も無く、一つの駒袋に収められる。まさに和を以て貴しとなす、海外由来ながら日本の心を体現するゲームではあるまいか。この和洋折衷でより良く進化する、日本独自のスタイルは、食でも同様だ。
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