【前回の記事を読む】鯖缶を温め過ぎて缶が爆発!しかもその時、運悪くタンクトップを着ていて、むき出しの上半身に…

二、 椀物

フライパンにバターを投入、にんにくを入れ、それがキツネ色になったら、缶詰の中身を全て入れる。良い匂いが漂ってきたら、塩胡椒を軽く振り、白ワインを入れ、蓋をして待つことしばし、これでソースが出来た訳だ。

このソースにアルデンテに仕上げた細めのパスタを入れ、軽く火を入れ、仕上げに刻んだパセリと、パルミジャーノ・レッジャーノチーズをすりおろせば出来上がり。

これを食べだすとワインが止まらない。

 

「トリッパ」缶は牛の内臓、日本で言えばハチノスだ。トマトとオリーブオイルで長時間煮込んであり、臭味はまるでなく、程良い柔らかさだ。作り方は「マリナラ」とほとんど変わらない。バターがオリーブオイルに、白ワインが赤に変わるだけだ。

こいつは、太めのショートパスタかバゲットだろう。 だが、常に私の傍にあったのは、老舗漬物屋の、福神漬の缶詰だ。生家でカレーを食べる際、母がキコキコとこの缶詰を開けていた。この缶詰、一六七五年創業のメーカーという。

当時は樽詰めの漬物を売っていたのが、文明開化の波と共に、缶詰にも手を出したのだろう。関東風の濃い味付けだが、酒にも飯にも良く合う。歴史の符号と、興味深く感じるのが、このメーカーが出来た年は、徳川家四代目家綱将軍の御代だ。

この家綱公の後見人が、彼の有名な沢庵和尚だ。家綱公、福神漬に沢庵と、余程漬物に縁がある将軍だったに違いあるまい。もっとも、初代将軍家康公は、奈良漬けをこよなく愛し、職人を大和から江戸まで呼び寄せた由、先祖の血は争えないのかもしれぬ。